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こんな方におすすめ
- 『名探偵のままでいて』の感想を読みたい方
- レビー小体型認知症の家族を介護している方
- 認知症のある人との関わり方を考えたい方
- 高齢者看護や認知症看護に携わる方
【ドラマ感想】『名探偵のままでいて』―レビー小体型認知症だった母を思い出して
先日、ドラマ『名探偵のままでいて』が最終回を迎えました。

名探偵のままでいて (ペーパーバック) / 小西マサテル (著)+[販売店ノベルティー]2024年04月03日発売 ミステリー小説 名探偵のままでいて
ミステリー好きの私としては、毎回とても楽しめる作品でした。
謎解きそのものはもちろんですが、何より心を引かれたのは「名探偵」の設定です。
主人公・楓の祖父は、レビー小体型認知症を患っています。
認知症のある高齢者が、鋭い観察力と長年の経験をもとに、日常に潜む謎を鮮やかに解き明かしていく。
この設定がとても独特であり、同時に私にとっては、決して他人ごとではありませんでした。
なぜなら、亡くなった私の母も、レビー小体型認知症だったからです。

「認知症」という言葉だけでは語れない母の姿
認知症と聞くと、物忘れが進み、何も分からなくなってしまう病気だと思われがちです。
けれど、母を見ていると、そのような単純なイメージには当てはまらないと感じることが何度もありました。
ニュースを見ながら、状況をきちんと理解し、ごく普通に、時には「なるほど」と思わせるようなコメントをすることもありました。
話の内容もしっかりしていて、
「本当に認知症なのだろうか」
と思うほど、頭が冴えているときもあったのです。
一方で、幻視はすさまじいものでした。
そこにはいないはずの人が見える。
実際には起きていないことが、母には現実として見えている。
家族にとっては、どう対応したらよいのか分からず、戸惑うことも少なくありませんでした。
けれど不思議なことに、幻視を見ている自分自身を、どこか冷静に眺めているようなときもありました。
「見えている。でも、これは本当ではないのかもしれない」
そんなふうに、母自身が自分の状態を俯瞰しているように感じられたのです。
ドラマを見ながら母を思い出した
『名探偵のままでいて』で、奥田瑛二さんが演じる祖父もまた、幻視や記憶の揺らぎを抱えながら暮らしています。
けれど、孫娘の楓が持ち込む謎に向き合うとき、その観察眼は驚くほど鋑く、言葉の裏側や人の心の動きを丁寧に読み取っていきます。
ドラマを見ながら、私は何度も母のことを思い出しました。
病気になったからといって、その人が長い人生の中で培ってきた知識や経験、考え方のすべてが、突然なくなってしまうわけではありません。
見え方や感じ方が揺らぐことはあっても、その人らしさは、確かにそこに残っています。
むしろ長く生きてきたからこそ気づける、人の表情や言葉のわずかな変化もあるのでしょう。
一つの出来事を物語として捉え、その背景にある人の思いや事情を想像する力。
それは、単に頭の回転が速いというだけではありません。
長い人生の中で多くの人と出会い、さまざまな価値観を受け入れ、喜びも悲しみも経験してきたからこそ見えるものなのだと思います。
「推理のときだけ元に戻る」ではない
作品紹介では、祖父が推理の時間だけ「聡明な名探偵に戻る」と表現されることがあります。
しかし私は、ドラマを見ながら少し違うことを感じていました。
祖父は、名探偵に「戻った」のではない。
名探偵としての力は、ずっとその人の中にあったのではないでしょうか。
病気の症状によって、それがうまく表に出てこない時間がある。
周囲からは見えにくくなることがある。
それでも、その人が生きてきた時間や、身につけてきた知恵、その人らしい感性まで消えてしまったわけではありません。
レビー小体型認知症には、認知機能や注意力の状態が大きく変動する特徴があります。しっかり会話ができるときもあれば、反応が乏しくなるときもあります。
その揺らぎを知らなければ、周囲は「さっきはできたのに」「本当は分かっているのでは」と誤解してしまうことがあります。
けれど、それは本人の意思や努力の問題ではないのです。
母の姿を思い返しても、調子のよいときだけが本当の母で、幻視に苦しんでいるときは母ではない、とは思えません。
どちらも母でした。

認知症が、その人のすべてではない
看護師として働いていると、患者さんを病名や症状から見てしまいそうになることがあります。
「認知症の患者さん」
「パーキンソン病の患者さん」
「介助が必要な患者さん」
医療や介護の現場では、情報を共有するために、そのような言葉が必要なこともあります。
けれど、病名はその人の一部分にすぎません。
その人には、病気になる前から続いている人生があります。
仕事をし、家族を支え、人を愛し、失敗し、悩み、いくつもの選択を重ねてきた歴史があります。
今、うまく言葉にできないからといって、何も考えていないわけではありません。
反応が少ないからといって、何も感じていないとも限りません。
そして、支援を受ける立場になったからといって、その人の知性や尊厳、人生の価値まで失われるわけではないのです。
老人を侮ってはいけない
このドラマを見終えて、私の中に残ったのは、この言葉でした。
老人を侮ってはいけない。
高齢だから。
認知症だから。
病気があるから。
そんな理由で、その人の力や可能性を、周囲が先に決めつけてはいけないのだと思います。
長く生きてきた人にしか見えないものがあります。
積み重ねてきた経験があるからこそ、人の言葉の奥にある感情に気づいたり、目の前の出来事を別の角度から捉えたりできることがあります。
『名探偵のままでいて』は、ミステリーとしての面白さだけではなく、「人は病気だけで語れる存在ではない」ということを伝えてくれるドラマでした。
そして私にとっては、亡くなった母の姿を、もう一度ゆっくりと思い出す時間にもなりました。
幻視に苦しんでいた母。
家族を戸惑わせた母。
それでも、ニュースを見ながら的確なことを言い、私を驚かせた母。
病気になっても、母は母のままでした。
ドラマのタイトルのように、母もまた最後まで、母のままでいてくれたのだと思います。

今日もゆるーりとね💕






